IconSticker: 実世界に取り出した紙アイコン
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概要:
IconStickerは、計算機の画面と、実世界の間で継ぎ目のない情報の取り扱いを実現する仕組みである。
デスクトップメタファー方式のコンピュータの利用者は、アイコンを画面の中に並べて情報を整理している。アイコンを画面の外にとりだす手段がないので、実世界に並べることはできない。アイコンを実世界に取り出すことが出来れば、画面の中だけでなく、実世界にアイコンを並べて整理し、情報を公開し、他人と交換することもできるであろう。

従来のデスクトップ画面。アイコンを並べて情報を整理している。
IconStickerはアイコンの図柄と、バーコードを印刷した紙片である。バーコードリーダー付マウスでバーコード部分を走査すれば、コンピュータ画面でアイコンの情報を閲覧することもできる。画面の中のアイコンをIconStickerとして印刷することで、アイコンを画面の外に取り出し、実世界に並べる操作を可能にする。


IconStickerを使って画面の外にもアイコンを並べた様子。
試作:
IconStickerの試作システムは、画面の左下に、「実世界への出口」アイコンを表示する。利用者がここに書類やアプリケーションのアイコンをドラッグ&ドロップすると、ディスプレイの脇のバーコードプリンタがIconStickerを印刷する。このことで、アイコンを実世界に取り出す操作を実現する。


画面内のアイコンを、「実世界への出口」アイコンにドラッグ&ドロップすると、
このアイコンに対応するIconStickerが印刷される。
IconStickerは、アイコンの図柄、アイコンの名前、およびバーコードが印刷された紙片である。バーコードには、元になったアイコンを特定するための情報が含まれている。

IconStickerの例。アイコンの図柄、名前、バーコードが
28 x 89 mm のラベル用紙に印刷される。
画面のアイコンを指示してダブルクリックすると、その内容が表示される。これと同様に、IconStickerのバーコードを読み取ると、このアイコンの内容が表示される。アイコンがアプリケーションの場合は、アプリケーションが起動する。アイコンとIconStickerの操作を同じデバイスで行えるように、バーコード読み取り装置を内蔵したマウスを用意する。現在の試作機では、ペン型マウスと、ペン型バーコードリーダーを組み合わせたものを用いている。

IconStickerのバーコード部分を読み取ると内容がコンピュータディスプレイに表示される。

試作機で使われているペン型マウスと組み合わされたバーコードリーダー
IconStickerの応用:
我々が長年紙に対して行なってきた情報整理手段が、IconStickerにも応用できる。たとえば、紙の書類と同様に紙挟みやスクラップブックで整理することが出来る。頻繁に使われるアプリケーションや書類のIconStickerは身近な場所に貼りつけておけば、素早くアクセスできる。
紙で行っていたような情報の配布や共有もIconStickerで行なうことが出来る。たとえば、掲示板にIconStickerを貼りつけたり、はがきに貼ったり、紙用コピー機によって大量のコピーを配布したりできる。
日用品にコンピュータへのリンクを貼ることで、その機能を増幅することもできる。たとえば、IconStickerを:
(1)印刷結果に貼って、オリジナルのファイルにアクセスできるようにする、
(2)電話機に貼って、電話番号データベースにアクセスできるようにする、
(3)プリンターなどのコンピュータ周辺機器に貼って、制御パネルプログラムや状態(たとえば印刷キュー)表示プログラムにアクセスできるようにする、
(4)製品やマニュアルなどに製造元のURLを貼って、アクセスできるようにする、
などの応用が可能である。
[IconStickerに関する発表論文]
- 椎尾一郎,美馬義亮,
"IconSticker:紙アイコンによる情報整理"
コンピュータソフトウェア Vol.16, No.6, pp.24-32, ISSN0289-6540,
岩波書店, 1999.11.15.
PDFファイル
[IconStickeの歴史]
- 1995/7/9-14
HCI International
'95にてInfoBinder(椎尾)を発表。小型のワイヤレス指示装置(InfoBinder)を使って物理アイコンを実現。おなじセッションで、NaviCam(暦本@Sony
CSL)も紹介される。色バーコードを実世界オブジェクトに貼りつけ、計算機オブジェクトへのリンクを実現。
- 1995/7
美馬・椎尾のディスカッション。美馬が、バーコードとアイコンを一緒に印刷するアイディア、(InfoBinderとNaviCamを合わせたアイディア)を提案。それを受けた椎尾が、実世界出口アイコンへのドラッグアンドドロップで、アイコンとバーコードを印刷して、マウスとバーコードリーダー一体型デバイスでコンピュータに読み込むというシナリオを考える。議論の結果ぜひやってみようと盛り上がる。
- 1995/11/13
IBM社内で発明開示を行う。開示番号JA8-95-0665(美馬、椎尾)「グラッフィック・コード・アイコン物理的な記号と電子的な記号の統合装置」。審査の結果特許性が無いと判断され、このままでIBM
Technical Discloseure
Bulletainに掲載するか、もしくは、ファイルを目指して再検討して再提出せよとの評価を受ける。
- 1996/7
ほぼ半年の練り直し作業の後、再度、開示番号JA8-96-0244
"Graphic Coded Icon"
(椎尾、美馬)として開示。しかしやはり特許性は薄いと判断されて、結局IBM
Technical Discloseure Bulletain掲載が決定。
- 1996/11
第2回HIプロフェッショナル・ワークショップ(情報処理学会ヒューマンインタフェース研究会主催、1996年11月15日(金)〜16日(土)@神戸タワーサイドホテル)のポジション発表で、PaperIconのアイディアを発表(椎尾)。
- 1998/5-6
MacOSのエイリアス機能を利用したデモプログラムを作成(椎尾)1995年当時のアイディアに比べて、
- PaperIconはエイリアスであると位置づけた。オリジナルは残る。(1995年アイディアでは未定)
- PaperIconとオリジナルとのリンク情報管理は、エイリアスファイル(OSの機能)を利用する。(1995年アイディアでは自前のデータベースを用意)
- バーコードリーダーで読みこまれた時、エイリアスのオープンと同じ動作(オリジナルが開く)となる。(1995年アイディアではオリジナルアイコンが現れる)
が変更となった。
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