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FieldMouse

FieldMouseは、ペン型機械式マウスと、バーコードリーダーを組み合わせたデバイスである。一般にマウスを、本・紙・壁・机などの平面に当てて移動すると、相対的な移動量を測定できるが、絶対位置を知ることはできない。そこで、平面に貼られたバーコードと組み合わせることで、絶対位置を測定する。使用者は、まず平面に貼られたバーコードを、バーコードリーダー部分で読み取る。次にこのバーコードを起点に、マウスを移動することで、バーコード位置を原点とした平面上の絶対位置を知ることができる。バーコードには、用途により、平面を特定する情報や、提示すべき情報へのポインターを埋め込んでおく。

本装置により、紙や机、壁、床など任意の物体の表面をペンタブレットのような絶対位置入力装置と同様に扱うことがでる。たとえば、本、紙、壁などに複数のリンクを埋め込むような、ARシステム、実世界指向システムを安価に構築できるようになる。

応用

1 Active Book

Active Bookは、ページの一部に貼りつけたバーコードを起点に、FieldMouseを動かすことで、紙の上に埋め込まれた情報にアクセスできる本である。図は試作したActive Bookの例である。絵本のページの左上のバーコードを読み取った後、登場人物の上に移動してボタンをクリックすると、登場人物の台詞が音声で再生される。

このほか、(1) テレビ番組雑誌に適用して、赤外リモコンインタフェース経由で録画予約を行なったり、チャンネルを切り替える、(2) 地図帳に適用して、ナビゲーションシステムに目的地や現在地を入力する手段として使う、(3) ビデオテープタイトルやカラオケ曲名のメニューブックに応用して、目的のコンテンツの再生を行なう、などの応用が可能である。

2 Active Paper

紙に印刷されたメニューを使って、機器のコントロールや入力も可能である。たとえば、(1) 紙に印刷されたボタンを選択して機器を制御する、(2) 時計の絵や、紙のカレンダーを使って、時刻や日時を入力する紙メニュー、(3) CDジャケットの曲目一覧を指示して選曲するなどが可能である。Pie Menu の手法を使って、バーコードの読み取り直後の移動で、メニューを選択することもできる。

3 Active Surface

紙以外にも、任意の平面がペンタブレットのように利用できる。そこで、事務机を覆う透明シートの下に置いた紙片をメニューの項目に使ったり、壁や、倉庫に積み上げられた段ボール箱、本のページなどに、仮想的なメモ書きを行なう利用が可能である。

4 オーサリング機能

本装置を音声記録機構と組み合わせれば、たとえば本や紙の任意の位置に音声メモを付けられる。絵本にオリジナルの台詞を吹き込んだり、写真アルバムを見る家族・友人の会話を写真に貼りつけたりすることが可能である。

WWWページのハードコピーに本装置を応用すれば、隅に1個のバーコードを埋め込むだけで、複数のアンカーポイントを指示できる。たとえば、図2のシステムではリンク情報をHTML形式で記述しており、絵本が音声データへのリンクを持つクリッカブルマップのハードコピーとして機能している。

本装置の移動をタイムスタンプ付で記録すれば、たとえばマウスの動きで道順説明するアニメーションのオーサリングにも利用できる。

5 Scroll Browser

Scroll Browser は、FieldMouseの移動と反対方向に画像をスクロールする小型ディスプレイにより、物の表面に仮想的に貼りつけた大画像の一部を、ディスプレイの窓枠を通して閲覧する感覚を提供する、簡易型のARシステムである。図 4では、壁にバーコードを貼りつけ、壁の中の配線や柱の様子をのぞき見ている。このほか、(1) 壁に仮想的に貼った大きな掲示物を閲覧する、(2) 教材として機械内部や人体の臓器を閲覧する、(3) 手押し車型の構成にして床下や地面の下の配管などを閲覧する、などの応用も考えられる。


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